会長挨拶

 この度,2022年11月10日(木)~12日(土)の3日間,第63回日本児童青年精神医学会総会を長野県松本文化会館(キッセイ文化ホール)/松本市総合体育館で開催する運びとなりました。

 子どものこころは,生来的な素質と環境との相互作用によって多彩な発達を遂げます。生来的な素質の異常である神経発達症は,子どもの約1割にその特性が見られると推定され,注目を集めています。一方,生活環境のなかで,児童虐待やいじめなどによるストレスやトラウマを体験し,こころの発達に負の影響を受けた子どもたちのケアは,重要な課題となっています。2019年以来のコロナ禍や,毎年のように発生する災害被害も,子どものこころに深刻な影響を及ぼしています。
 今回の総会のテーマは「こころの発達,それを支えるコミュニティ」です。子どものこころの発達を支え,よい相互作用の得られる環境を整えていくためには,地域のさまざまな領域の人たちが連携して取り組んでいく必要があります。子育てに関わる現場のスタッフだけでなく,法制度や自治体行政による体制整備も求められます。総会では, 神経発達症やストレス関連の子どものこころの問題などに関して, 新しい研究成果の発表や情報交換の場を提供し, 児童青年期領域の精神医学の発展に寄与していきたいと考えております。また,子どもを取り巻く環境をよりよいものとするためのコミュニティづくりについて,福祉,教育,行政などの領域を含めた学際的な議論の場を設けたいと考えております。
 長野県で本学会総会が開催されるのは,今回がはじめてです。信州大学では,2002年に全国の国立大学附属病院に先駆けて「子どものこころ診療部」を開設しました。2018年からは長野県の「発達障がい診療人材育成事業」を受託して,「子どものこころの発達医学教室」を開設しております。こころの発達を支えるコミュニティづくりを自治体と大学が協働して進めているところです。今回の総会によって,このような地域の取り組みが全国で活性化する契機となれば,望外の喜びです。

 コロナ禍の今後の影響によってはオンラインでの開催となる可能性もございますが,可能な限り松本で皆様にお会いできるよう準備を進めていきたいと思います。自然と文化に恵まれた信州で,11月に多くの皆様とお会いできることを楽しみにしております。

第63回日本児童青年精神医学会総会会長 本田 秀夫
(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室)